• 2022/09/29
  • 鍼灸・東洋医学
鍼灸で自律神経を興奮させたり鎮静化させたり?無理でしょ!

SNSの鍼灸師のグループトークで
ある鍼灸大学の有名な教授の本に
自律神経を整えるツボの記載があるというので
さっそくその先生の本をネットで取り寄せた

見て見ると坐位で鍼を打つと交感神経
臥位で打つと副交感神経に作用する

皮膚や脂肪組織は副交感神経
筋肉は交感神経に作用する

要するに治療時の姿勢と
鍼の深さで自律神経の調節が可能と
言わんばかりの内容だった

しかし

私はツボを刺激すると
ナゼ交感神経が興奮するのか?
ナゼ副交感神経が興奮するのか?
また
刺鍼によって交感神経が興奮したことを
どのような方法で実証されたのか?

喘息の治療に合谷と孔最というツボを
使う理由はナゼなのか?

「そこが知りたい」という内容が
まったく語られていない本である

やっぱり養成学校の先生などは
論文や本の執筆で忙しくて
ほとんど臨床治療をしていないので
内容が薄っぺらであり仮説でしかない

そんなに簡単に鍼灸治療で自律神経が
調節できるなら有り難いと思って
読んでみたのだがガッカリな内容だった

そもそも鍼灸師が鍼灸治療の説明で
「ツボを使って自律神経を調節する」などと
説明しているのをよく見るが
あれは全くの間違いだと思っている

中国の古典にも日本の古典にも
交感神経を興奮させたり
副交感神経を興奮させることが目的の
ツボはどこにも紹介されていないのだ

鍼灸治療は中国5000年の長い臨床の
蓄積であり統計学だと思っているので

胃には足三里、不眠に失眠、動悸に労宮
のように特効穴があり
そんなツボがあれば絶対に広く
知られているはずである

古来より「天人合一」といって
大自然に浄化作用があるように
人の体にも自然に治る力が備わっていて

鍼灸治療はツボを使って体が持っている
「異常を正常に戻す力(自然治癒力)」を
最大限に引き出すことができる技だと思う

例えば
土砂崩れでむき出しになった斜面は
雨が降って草が生え太陽の恵みがあり
昆虫や動物の営みがあっていろいろな関わりの中で
浄化されて健全な状態に戻ってゆくのである

人間の自然治癒力も自律神経だけを
調節したら改善されるような単純なものではない

この本を読んで鍼灸治療で自律神経を
調節するツボはやっぱり無いんだと
改めて思ったのだ

鍼灸治療で自律神経が整うのは
体の陰陽虚実を把握して証に従って
正確に正しくツボを刺激することによって
気血の巡りが良くなり五臓六腑の働きが
順調になり筋肉や心がほぐれ
心身共に健康になる
その過程で自律神経も整うのである。



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