脊柱管狭窄症
  • 病名
  • 脊柱管狭窄症
背骨は椎骨という骨がいくつも連なって脊柱という背骨を形成している。
そして脊柱には脊柱管という脊髄神経の通る管があり、その管が生まれつきあるいは何らかの原因で狭くなり、脊髄神経を圧迫しておこる、首や腰の痛みや間歇性跛行などの特徴的な症状を呈する疾患です。60才前後の男性に多いですが、年齢性別問わず発症します。
  • 種類
  • 脊柱管狭窄症の種類
脊柱管狭窄症は頸部と腰部におこることが多く、頸部脊柱管狭窄症と腰部脊柱管狭窄症にわけられます。また、脊髄は脳、延髄から続き背骨を貫いている中枢神経で、腰椎の1〜2番の高さから馬尾神経という、文字の通り馬の尻尾のような形状になります。
圧迫される神経による分類もされます。

1.部位による分類
①頸部脊柱管狭窄症
・肩から腕、指先にかけて痛みやしびれがあらわれる
・上肢全体が重く、指先に力がはいらない

②腰部脊柱管狭窄症
・腰が重く、痛い、足にしびれがでる
・間歇性跛行を呈する(歩いていると足が出なくなり、少し休むと再び歩くことができる)

2.神経による分類
①神経根型
脊髄神経から末梢神経が出る根元を神経根といい、神経根が圧迫されて痛みやしびれがおこるものを神経根型という。

②馬尾型
大脊髄神経は腰椎の1〜2番の高さから馬尾神経になっていて、馬尾神経が脊柱管の内部で圧迫されておこるものを馬尾型という。

③混合型
①②の神経根と馬尾神経の両方が圧迫されるものを混合型という。
  • 治療
  • 脊柱管狭窄症の治療
脊柱管狭窄症では、腰痛や下肢のシビレなどで病院を受診して、レントゲンやMRI検査の結果脊柱管狭窄症と診断される。
以前は診断されると即手術しかない疾患とされていたが、現在では症状のひどいケースは手術を勧められるが、それ以外は保存療法を行い、症状に改善が見られない時に手術を考えます。

①薬物療法
・消炎鎮痛薬
・筋弛緩剤
・プロスタグランジン製剤
・ビタミンB12

②理学療法
・患部をホットパックや電気治療で温める温熱療法
・頸椎や腰椎を牽引器で牽引する牽引療法
・超音波や低周波を通電する通電療法
・ストレッチやマッサージ

③運動療法
腹筋、背筋、大殿筋などの脊柱を支える大きな筋肉を中心に筋力強化し、腸腰筋や大腿四頭筋のように骨盤を正常な姿勢にしてくれる筋肉を鍛えることにより、背骨が補強され正しい姿勢を保つことにより、患部にストレスのない状態を作ります。

④神経ブロック療法
飲み薬の痛み止めが無効だった時に行われます。
・硬膜外ブロック注射
・神経根ブロック注射
・トリガーポイントブロック注射

⑤鍼灸治療
薬や神経ブロックで痛みが治まらない症状でも、鍼灸治療で治まることがありますので、外科で手術を勧められたら、その前に鍼灸治療を是非お勧めします。
MRIやCTなどの画像診断で脊柱管が狭くなり、脊髄神経の通り道が非常に狭くなっている症例でも、鍼灸治療で痛みや間歇性跛行が消失しますので、画像診断で医師に「これだけ圧迫されているのだから手術しかない」と言われても、手術に踏み切る前に是非鍼灸治療を受けた頂きたい。

⑥手術
脊柱管狭窄症の手術は狭くなった脊柱管の通りを良くすることが目的となります。
脊柱管が狭くなっている靱帯を切除したり、脊椎の一部の骨を切除して除圧します。

1.椎弓切除術
背部を大きく切開する方法と、内視鏡を使用する方法があるが、脊柱管の内圧を下げるために椎骨の後方にある、椎弓を取り省く方法である。
椎弓の切除のやり方はいくつか種類があり、除圧法とも言われます。
2.椎体固定術
分離症やすべり症などの椎骨の不安定が著名なケースに選択される術式です。
変形した椎間板を摘出し、人口の椎間板で内方から固定し、上下の椎骨を外からビスで固定します。

いづれの手術もリスクが伴います
合併症
1.手術の際に神経を損傷することによる、下肢の麻痺、知覚鈍麻、排尿排便障害
2.術後椎間板炎(椎間板に炎症がおこり、激しい腰痛が続く)
3.創部に血腫が形成し、神経を圧迫して神経麻痺や下肢に放散痛が続く
4.腹部の大動脈を損傷して手術中の大出血を起こす
5.深部静脈血栓症
6.肺炎など
  • 施術法
  • 実際の症例と施術法
Fさん 65歳 男性

昔からよくぎっくり腰になり、整骨院や整形外科で治療していたが、平成25年の秋祭りの際に蒲団太鼓の交通整理で町中をねり回り、昼食の後足が一歩も前に出すことができなくなり、しばらく会館で休憩してから家に帰ったが、右腰から太ももにかけて重だるい痛さを感じ、翌日当院を訪れるも月に一度の11日の定休日だったので、整形外科へ行き椎間板ヘルニアと診断された。しばらく通院したが改善しないので、脳神経外科でMRIで精密検査を受けて脊柱管狭窄症と診断された。
その後も整骨院や整体院へ通院していたが悪化の一途をたどり、間歇性跛行が著しくなってきて、好きなゴルフにも行くことができなくなり、何とかならないかと思ったときに当院の事を思い出して来院した。

【所見】
SLR右陽性、左陰性、パトリックテスト右陽性、左陰性、
右小野寺殿点周囲の圧痛著名
体幹回旋、臀部持ち上げ運動OK
腰から右下肢にかけての重だるさと痺れが著しく、間歇性跛行の間隔も短くなり、5分歩くと休憩しなければならない。

弁証論治
淡紅舌、胖大舌、舌苔白厚膩、顔色赤、五声呼、体を動かすのが好きで早くゴルフをしたくてイライラしている、脈浮実弦

(証)   肝鬱症 痰飲
(治則)  疏肝 健脾化湿

【経過】
初診 治療後何もしていない時に感じる痛みが軽減したので、一日置きに通院

2診 初回で治療後すぐに腰が軽くなり少し用事をしているとやっはり痛みが出た

3診 安静にしていると全く痛みを感じなくなる

4診 友人と風呂に行き良く温めても痛みはなく、その後居酒屋で酒を飲んだが痛みは出なかった

5診 ゴルフをラウンド出来た。終盤少しシビレが出たが間歇性跛行もなかった

6診 日常生活の問題なし

7診 経過良好

【考察】
この患者さんは脊柱管狭窄症と椎間板ヘルニアを両方もっていて、今回の症状の原因について整形外科と脳外科のドクターの見解が違い、あちらの先生は脊柱管狭窄症が原因だ、こちらの先生は椎間板ヘルニアが原因だと言っている。
そして、この患者さんは症状が消失した後も椎間板ヘルニアの手術を勧められて困っておられる。
健康とは何か?身体の形が元の状態になる事が健康ならば手術しなければならない。しかし健康とは形態的な物ではなく、今の年齢で、今ある体力を不自由なく使えて、社会的、精神的に健全な生活をおくることであるならば、この患者さんはすでに健康状態にあるのである。
発症から7か月間あちこちの病院や整体院で様々な治療をしたが、悪化の一途を辿ったが、当院で5〜6回の治療、2週間で症状が消失した症例である。

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