不眠症(睡眠障害)
  • 病名
  • 不眠症(睡眠障害)
眠れない、すぐに目が覚めてしまう、夜中に何度もトイレにい行きたくなる、睡眠が浅くて寝た気がしない、など睡眠に関する悩みで当院へ来られる患者さんは多いです。
睡眠と覚醒とは表裏一体の関係にあり、良い睡眠がとれていれば昼間も意欲的に活発に活動できますが、睡眠不足が続きますと昼間のパフォーマンスも低下してしまい、意欲、集中力など様々な機能が失われてしまい、心身ともに不健康に陥ってしまいます。
日本人は先進国の中でも睡眠時間が極端に短いことで知られていますので、睡眠不足には元来強い民族なのかもしれませんが、睡眠時間を削ってでも仕事をしたり勉強したりすることは、実は睡眠と覚醒のバランスを崩してしまい、結局パフォーマンスが落ちてしまい実力を出し切ることは出来なくなりますので、睡眠の重要性をもう一度確認しておきましょう。

【睡眠のしくみ】
我々が眠くなるには2つのシステムが関係しています。

(脳が疲労する)
脳は起きている時には常に活動しており、我々が自分で意識していない体内の活動を全て主ってくれています。その膨大な仕事量から次第に疲れがたまってきて、睡眠物質というものを溜めてゆきます。睡眠物質が脳脊髄液中に多くなると視床下部の睡眠中枢が興奮して、脳を休ませるために眠気が起こる。

(体内時計が朝と夜を告げる)
我々の体には体内時計がセットされていて、ほぼ24時間の周期でリズムを刻んでいます。そのリズムを正確に刻むのに欠かせないのが朝の太陽の光です。
起床して太陽の光を浴びると体内時計がリセットされて朝であることを自覚して、交感神経やアドレナリンやセロトニンなどの戦うホルモン系が昼間の活動に備えて興奮します。
そして体内時計がリセットされてから14〜16時間後に体内時計の指令によって皮膚から熱を放出して、体の内部の温度が下がり、次第に休息態勢に向かっていきます。

このように睡眠とは脳が疲労する事による仕組みと、地球の自転に合わせた体内時計のリズムによる仕組みとの2つの仕組みで行われているのです。
【睡眠とは何?なぜ睡眠が必要なのか?】
睡眠とはただ横たわて意識が無い状態ではありません。
①脳と身体の休息をとっている
②記憶の生理と定着を行っている
③ホルモンバランスを調整している
④免疫力、自然治癒力を上げている
⑤脳の睡眠物質などの老廃物の掃除


【睡眠は量より質】
毎晩10時に寝て朝6時に起きるのだが、夜中に目が覚めてその後なかなか寝付けなくて朝までウトウトして、ぜんぜん寝た気がしない。などという人がいると思えば、毎日あれこれ用事をしていると寝るのが12時頃になるが、毎日朝6時に目が覚めるとスッキリしているという人もいる。
睡眠とは長時間寝たら良いのではなく、睡眠中に脳と身体の休息をとり、老廃物の掃除をしたり、睡眠中にやるべきことが行われていれば短時間でも睡眠の役割が果たせるのです。
だから睡眠不足を解消したいのなら、長時間寝ればよいという間違った考え方を捨てて、質の良い睡眠をとるための努力をしなければならないのです。

【質のよい睡眠をとるために】
質の良い睡眠をとるためには朝目覚めた時からの行動がとても重要になります。
1.朝の光を浴びる
2.午前中に運動をしっかりする(日が暮れてからの運動は交感神経が興奮するのでNG)
3.昼寝は30分いないで行う
4.胃腸の調子を整える
5.よく噛んで食べる
6.コーヒーなどのカフェインは午後2時までに飲む
7.就寝90分前に入浴する
8.瞑想の達人になる
9.午後10時〜午前2時の睡眠銀座に熟睡する
  • 治療
  • 睡眠障害の治療
不眠症は中医学的に陰陽の調和が乱れととらえます。
陰陽論とは古代の中国人が物事の尺度を推し量る物差し代わりに考えだした概念で、
世の中のすべての物事を陰と陽に大別して、その属性によって区別をつけるようになったのです。
陰の代表は水で、その特徴は冷たく、下に流れる、暗く、静的
陽の代表は火で、その特徴は暖かく、上に上がり、明るく、動的

人の体も陰陽に当てはめて考えるようになり、上半身が陽で下半身が陰、背中側が陽でお腹側が陰というように考えます。
昼間はよく活動する陽気が活発に動いて、夜になると陰気が活動して静かに眠ることができると考えるのです。

体の中で陰気と陽気のエネルギーバランスがよく、昼間と夜間の陰気と陽気の調和がとれている状態だと、昼間は元気に活発に活動して夜はぐっすりと眠れます。
ところが陰気と陽気のエネルギーバランスが崩れて調和が保てなくなると、夜なのに陽気が活動してしまい、入眠できない、すぐに目がさまめる、一度目が覚めるとなかなかねむれない、などの睡眠障害を起こしてしまいます。

当院では陰陽のエネルギーバランスを整えて陰陽の調和を保つ事を目的に鍼灸治療を行います。

【良く使うツボ】

失眠  足のかかとの真ん中にとります
神門  手首のシワ上で小指側の腱の内側にとります
太衝  第1・2中足骨の接合部の前の凹みにとります
  • 施術法
  • 実際の症例と施術法
Kさん 54歳 女性

3年前に夫の転勤と娘が結婚したことで一人暮らしとなり、突然の環境の変化に戸惑っていると、かねてからイライラしたり不安感にさいなまれたりするような、更年期障害の症状が強くなり、手足の冷え、動悸息切れが顕著に現れ、喉に異物感があり唾を飲み込むのが困難になり、寝付けなくて朝起きても熟睡感がまるでない。
産婦人科で更年期障害と診断されホルモン補充療法をためしたり、漢方薬をためしたりしたが、逆に下痢をしてしまって体調を崩したので、入眠剤や安定剤を服用しているが、薬で寝ていても改善するイメージがなく、不安に思って色々調べてみると鍼灸治療が良いとしったので、インターネットで当院を見つけて来院した。

【所見】
寒証により手足の冷え、頻尿、ガスなどの症状が強い
陰虚証により肝鬱になり精神不安と梅核気を呈す

弁証論治
不安感、昼間の眠気が強い、筋力OK、不眠、胖大歯痕舌、脈沈大
(証)   陰虚 寒証
(治則)  補陰 温熱 

【経過】
初診 鍼灸治療後帰宅してすぐに眠くなり昼寝をして、夜も良く寝ることができた。

2診 睡眠剤や安定剤をつかわなくても眠れるひがあるので、自信が湧いてき来た

3診 運動して疲れた方が眠れると考えて夜間にウオーキングをしているといわれたので、日が暮れてからなの運動は禁止する

4診 薬を飲まないで眠れるようになってきたが、更年期障害による睡眠障害や精神不安は、症状に波があるのでまだまだしっかり通院するよう指導した。

5診 経過良好にて1週間に1回の治療を継続

6ヶ月後には不眠症、冷え症、精神症状、動悸などの症状がほぼ抑える事ができるようにコントロールされるようになった

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