自律神経失調症
  • 病名
  • 自律神経失調症
からだのあちこちが調子悪く、頭痛、肩こり、不眠、便秘、下痢、冷え症などの不定愁訴が辛くて病院へ行くが、どんな精密検査をしても病名が判らないので、更年期障害ではないか、年のせいではないか、気のせいだなどと言われてしまうような症状の、都合の良い病名としてよく使われるのが自律神経失調症です。
身体的症状と精神的症状が入りまじっていて、内科、外科、整形外科、婦人科、消化器科、脳外科、神経内科などと、各症状を各々追いかけていくと多くの病院をたらい回しにされて、これという治療法が無く頭痛には頭痛薬、食欲不振には胃薬、不眠には睡眠薬というように対症療法的な対処が重なり、薬物の副作用等で寝たきりや鬱症状が悪化して統合失調症に陥る危険性があります。

  • 種類
  • 自律神経失調症の種類
自律神経は全身の機能を私たちが自分で考えなくても、自動的に全身の器官のコントロールをしている重要な神経なので、自律神経がバランスを失うと全身のあらゆる器官に支障をきたし、精神症状も現れるのです。
原因としては、生活リズムの乱れ、過度のストレス、ストレスに弱い体質や性格、環境の変化、女性ホルモンの変化などがあげられるが、一人一人原因が違い色々な要素が絡み合い原因を特定するのは困難である。

1.本態性自律神経失調症
生まれながらに自律神経が乱れやすい体質の人で、体力に自信が無い虚弱体質の人で、低血圧の人に多くみられます。

2.神経症型自律神経失調症
精神的ストレスがダイレクトに体の変調につながるタイプの人で、自分の体調の変化に非常に敏感で、精神的ストレスに過敏に反応して、感情の移り変わりが体に症状として現れます。

3.心身症型自律神経失調症
自律神経失調症の中で最も多いのが心身症型です。勤勉で真面目な人に多く、精神症状と器質的身体症状が現れます。

4.抑うつ型自律神経失調症
心身症型自律神経失調症の症状が悪化して抑うつ型自律神経失調症になります。
全身に力が入らない、やる気が出ない、精神的に落ち込むなどの鬱症状が強くあらわれます。
  • 治療
  • 自律神経失調症の治療
自律神経失調症は各個人で症状があまりにも違うので、実際にはもっと多くの証に分別されるが、ここでは非常に大ざっぱに4つの証に弁別して、治療法を紹介しします。

①心腎不交

心腎不交症は不眠を主訴として心火亢盛、腎水虚弱を伴う事を弁証のポイントとする。
(症状)
心煩、不眠、動悸、不安感、眩暈、耳鳴り、健忘、腰痛、腰部から下肢にだる痛さや冷感を感じる、遺精、五心煩熱、咽乾口燥、舌紅、脈細数
(治法)
交通心腎

②心脾両虚

心脾両虚は動悸、不眠、顔色が萎黄、精神不振、食欲不振、腹部膨満、溏便及び慢性出血を弁証のポイントとする。
(症状)
動悸、不眠、多夢、眩暈、健忘、顔色が萎黄、食欲不振、腹部膨満感、溏便、精神不振
皮下出血、女性では生理量が少なく色が淡い、生理不順、舌質淡嫩、脈細弱
(治法)
補益心脾

③肝鬱気滞

肝鬱気滞証はイライラした精神状態でわき腹から上肢の痛みや胸脇の張りが弁証のポイントです。
(症状)
イライラして怒りっぽい、腹から上肢の痛みや胸脇の張り、胸が苦しい、ため息をつく
咽喉部に異物が詰まったような感覚がある(梅核気)、女性では乳房の張りと痛み、積聚
(治法)
疏肝理気、破積散聚

④痰迷心竅

鬱やノイローゼの症状が強いのが特徴です。
(症状)
胸悶心痛、精神錯乱、卒倒、人事不詳、喉で痰の音がする、苔白膩、脈浮あるいは滑(治法)
化痰開竅
  • 施術法
  • 実際の症例と施術法
Sさん 71歳 女性

20年前に体が重く立っていられなくなり精神不安が著しく、整形外科や脳神経外科を受診したが、神経内科を勧められて受診して自律神経失調症を診断を受けて、その病院へ今でも月に一度通院している。
夜も眠れない、物が重たくてすぐに落としてしまうなどの症状がひどく、緊張がひどく顔や首などの筋肉が痛く、寝返りも打つことが出来なくなり、フラフラして立っていられなくなり、整骨院や整体院へ通院していたが悪化の一途をたどっていた。
インターネットで調べては整体や鍼灸院をあちこち訪ねているうちに、当院を見つけてヘルパーさんに付き添われてタクシーで来院した。

【所見】
SLR陰性、パトリックテスト陰性、
体幹回旋、臀部持ち上げ運動OK
下肢の筋力は十分である

弁証論治
精神不振、動悸、心悸、不安感、恐怖心、フラフラ感と脱力感が強い、筋力OK、不眠、夜間頻尿、胖大歯痕舌、脈浮細
(証)   陰陽両虚 痰飲
(治則)  健脾化湿 疏肝 補腎

【経過】
初診 治療後はしっかりとした足取りで帰ったので、フラフラが和らいだようだ

2診 初回で治療後すぐに全身の痛みが軽くなり、自信が湧いてきて今日は一人でタクシーで来院した

3診 寝返りがスムーズに出来るようになる

4診 自信をもって歩くことが出来るようになってきたので、300メートルほど手前でタクシーを降りて歩いて来院し、帰りも歩いてタクシー乗り場まで帰って行った。
20年間一人で歩くことが出来なかったが、初診から1週間で一人で出歩くことが出来るようになった

7診 経過良好

【考察】
自律神経失調症はからだの症状と精神的症状が複雑に入りまじって、更年期障害や鬱病などとの因果関係も指摘され、大病院でどんな検査をしても、決定的な治療法はなく、手術で悪いところを摘出することもできず、長期間にわたり悩み苦しむことになるケースが多い。この症例はまさにその一例と言えます。
中医学に陰陽学説という概念があり、世の中に起こる全ての事がらを陰と陽の二つに当てはめて、それらのバランスを診ることができる。自律神経失調症は交感神経と副交感神経を陰陽に当てはめる、また、心のエネルギーとからだのエネルギーを陰陽に当てはめて、それぞれの調和をはかることによって改善したものと考えられます。

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